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シンギュラリティは本当に起こる?社会や生活への影響や今すべきことを解説

シンギュラリティと社会や生活への影響

シンギュラリティとは、AI(人工知能)が人類の知能を超える転換点(技術的特異点)のことです。ディープラーニングの技術がさらに進化することで、AIは自ら考え自律的に動くようになり、シンギュラリティの到来が現実味を帯びてきています。

本記事では、シンギュラリティの意味やいつ起きるのか、生活や社会に及ぼす影響のほか、今から何を準備すべきかについて解説します。

シンギュラリティって何?

 

シンギュラリティ(Singularity)とは、「技術的特異点」と理解されており、AIが加速度的な進化の末に人類の知能を超える転換点、または、それにより人類の生活に大きな変化が起きる概念のことです。アメリカの発明家であり人工知能研究の世界的権威でもあるレイ・カーツワイル博士らが、2005年に提唱した未来予測です。

シンギュラリティは、2012年頃にディープラーニングが登場した第3次AIブームあたりから、大きな注目を浴びるようになりました。日本では、野村総合研究所とイギリスの工学博士M.オズボーン他との共同研究において、「10~20年後に、国内の労働人口の約49%が人工知能やロボットで代替可能になる」という報告結果を発表したことから、雇用消失の危機感が一気に高まり、シンギュラリティが広く知られるようになっています。

2020年代初めでは、強いAI・汎用型AIはまだ実現していないものの、画像認識や音声認識、自然言語処理、予測などの分野で、AIが多くのビジネスで実装されています。今後は、膨大なデータがネット上に集約されビッグデータを活用できることから、これらの進化が加速することが予測されています。
 

シンギュラリティはいつ起こる?

 

シンギュラリティがいつ起こるかについては、諸説あります。それぞれ見ていきましょう。
 

■肯定派が提唱する2045年

前出のレイ・カーツワイル博士は、「2029年にAIが人間並みの知能を備え、2045年にシンギュラリティが来る」と、著書「The Singularity Is Near」において提唱しています。AIが人類の脳を超えると、AI自身でより優れたAIをうむようになり、人類は新たな発明やさまざまな予測の必要がなくなります。博士は、人類が予想できないさまざまな事象がうまれるとしており、これらを総称した「2045年問題」として、社会への影響や問題を指摘しています。2045年問題は、知能労働とされている仕事もAIで代替されるとしているのが特徴で、大きな雇用の変化や労働意識の変化をうむとしています。
 

■プレ・シンギュラリティが2030年に起こるという説も

スーパーコンピューターの開発者で、次世代の汎用AIの研究者でもある齊藤元章氏や、神戸大学名誉教授の松田卓也氏は、プレ・シンギュラリティが2030年頃に起こるとしています。シンギュラリティが、AIが人類の能力を超える技術的な変化を示す点であるのに対し、プレ・シンギュラリティは、社会的なシステムが変化する点としています。「貨幣がなくなり、生活必需品を無償で入手できる」「食糧問題が解決、衣食住は無償で提供される」などの社会・経済の変化や、「不老が実現」「労働が不要になる」など、人間のあり方も変わると唱えています。
 

■シンギュラリティが起きないという意見もある

シンギュラリティが起きないと説く著名人もおり、人工知能の権威でありスタンフォード大学教授のジェリー・カプラン氏は、この否定派の1人です。「ロボットには独立した目標及び欲求がない」ので、AIはあくまでも人間のためにあるとして、AIと人類を同一視する考え方を否定しています。
 

シンギュラリティ実現に関わる2つの法則

 

シンギュラリティ実現の可能性を考える際に、提唱者たちはそれを裏付ける法則として、以下の2つを挙げています。
 

■ムーアの法則

「ムーアの法則」は、半導体メーカーのIntel創設者の1人であるゴードン・ムーア氏が、「半導体の集積率は18ヶ月~24ヶ月で倍増する」と、1965年に唱えた法則です。この法則を有効とすると、半導体の性能は指数関数的に向上していくので、近い将来コンピュータが人類を凌駕する存在になるときがおのずと来ることになります。ただし、現在の半導体製造にはナノテクノロジーの技術が駆使されているので、ムーアの法則に限界説が唱えられています。ナノテクノロジーを使うと半導体は原子サイズにまで微細化でき、それ以上の微細化は難しいことから、ムーアの法則に従うのは物理的に難しいと、一部の有識者から指摘されています。
 

■収穫加速の法則

限界説が唱えられ、ムーア氏自身も2005年に「長くは続かないだろう」と発言したことから、その継承者によって新たな法則がうみ出されました。それが、レイ・カーツワイル博士による「収穫加速の法則」です。博士は、半導体だけではなく幅広いテクノロジーに応用して思考を広げ、「テクノロジーの分野では、ある能力がうみ出されると、その能力は次なる新たな能力の創造スピードを加速させる(収穫加速)」「収穫加速がそのまま進むと、シンギュラリティは実現する」と説いています。

これらの法則を根拠として、シンギュラリティの実現可能性が提唱されているのです。
 

シンギュラリティで社会はどう変わる?

 

シンギュラリティによって、社会や私たちの生活は、どのように変わるとされているのでしょうか。
 

■雇用への影響

シンギュラリティによって、一部の仕事や職業がAIに置き換わると予想されています。工場の生産ラインをAIが管理するようになり、タクシー・トラックなどのドライバーが、AIによる自動運転技術に代替されるかもしれません。コンビニの無人化によるAIレジ精算は、すでにスタートしています。こうして雇用の数が減り、コスト面で優位となれば、知能労働もAIに置き換わる可能性が高まります。人間が、AIと異なる価値観をいかに提供していくことができるか、AIとどう共存していくかが今後の課題となります。
 

■経済・社会への影響

シンギュラリティが起こると、性、年齢、就労状況、資産などに関わらず、無条件で最低限の所得支給を行うベーシックインカムの導入が進むと考えられています。これにより、貧困格差の解決などのメリットがありながら、就労意識の低下や所得支給に充てる財源確保などの課題もうまれます。
 

■人間のあり方への影響

シンギュラリティが加速度的に発展した場合、身体や健康、脳や臓器も、人工物で代替する可能性が高まるとされています。すでに人工関節や人工心臓などは用いられており、人間の臓器が人工物で代用可能となれば、人類は不老不死を手に入れることもできるかもしれません。
 

シンギュラリティに備えて身につけておきたいAI技術

 

シンギュラリティ実現の可否は、現時点では定かでないものの、AIによる生活や社会の進化は確実に進んでいます。早ければ2030年頃、注目が集まる2045年も決して遠い未来ではありません。シンギュラリティが起こると、製品やサービス、人の価値観、生活などが劇的に変化することでしょう。

シンギュラリティを目前として、今企業に求められることは、積極的にAIやクラウド、IoT、ビッグデータなどのテクノロジーを活用することで、時代に合わせたイノベーションを起こし、シンギュラリティによる変化にも対応できる取り組みを意識的に行うことです。人類が、AIと共存して、人間らしい暮らしと希望に満ちた社会を築くために、企業は最新の技術動向を捉えながら、今から現状のビジネスを時代に対応できるように変化させていく必要があります。

テクノロジー関連の企業に就職や転職を考えているなら、こうした状況や時代の変化に順応できるように、これらの知識やスキルを身につけることが、就職や転職を有利にする条件となります。
 

まとめ

 

シンギュラリティは、遠い未来の絵空事ではありません。加速度的に進化するAIによって、予測されている2030年や2045年よりも早く起きるかもしれません。シンギュラリティが起こると社会や生活が大きく変わると予想されることから、企業はテクノロジーを駆使した時代の変化に対応できるような取り組みを、今から行うことが必要となります。また、テクノロジー関連の企業に就職・転職を考えている場合は、これらを見越して、AIを始めとする様々な技術の知識やスキルを身につけておくようにしましょう。
 

 

 

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