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アカデミアと民間企業における「研究職」の違いとは?

アカデミアと民間企業における「研究職」の違いとは?

「研究職」とひと言で言っても、その働き方や環境は様々です。大学院の博士課程を修了した後、大学や研究機関(アカデミア)で研究を続けていくのか、それとも一人前の研究者として民間企業に就職するのか、迷ったことがあるという方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、アカデミアと民間企業における研究職の違いをご紹介。
それぞれの特徴を知ることで、これから先のあなたのキャリアの参考にしていただければ幸いです。

【目次】
1-研究職の分類
┗1-1 基礎研究とは
┗1-2 応用研究とは
2-アカデミアと民間企業では、力を入れている研究の種類が異なる
3-その他の要素から見る、アカデミアと民間企業の違い
┗3-1 研究予算・研究設備の違い
┗3-2研究に関わる体制(個人・チーム)の違い
┗3-3ひとつの研究テーマに要する期間の違い
4-まとめ

研究職の分類

専門性の高い研究職。どのような分野の研究を行うかによってその仕事内容は異なり、研究の数だけ仕事の数があるとも言えますが、一般的に、研究職は大きくわけて以下の2つに分類されています。

■基礎研究
■応用研究
■基礎研究とは
研究職と聞いて、一般的にイメージされやすいのが「基礎研究」です。
基礎研究とは、特別な用途に関係なく、未知の物質や未開拓の原理を発見・解明していく研究のこと。
長い年月をかけて成果を見出していくため、そこから生まれる原理や理論が、私たちの生活にすぐ活用されることは基本的にありません。
しかし、基礎研究は科学の発展に欠かせないものであり、過去には多くの偉大な成果を生み出しています。
物事を深くまで追求し、新しい考え方や理論を生み出していく基礎研究は、学問としての要素も強い職務と言えるでしょう。

■応用研究とは
一方で、基礎研究による既存の研究結果を活かし、それをどのように実用化していくのかを研究・開発するのが「応用研究」です。
応用研究は、長い年月をかける基礎研究とは異なり、次の技術に応用されるまでに明確な期日が定められている場合がほとんど。よりスピーディーな成果到達が求められるため、研究の難易度が高くなります。

一方で、自身の研究成果が一般化されやすく、世の中の新たな製品やサービスの開発にも直結していく研究となるため、それだけ達成感を感じる機会も多い職務と言えるでしょう。

アカデミアと民間企業では、力を入れている研究の種類が異なる

大学や研究機関(アカデミア)と民間企業における研究職の違いとしていちばんに挙げられるのが、上記した研究の種類のうち、力を入れているものが異なることです。

アカデミアにおける研究は、基本的に「基礎研究」がメイン。
研究結果を実用化できるかどうかよりも、そこには科学的な価値が求められます。

そのためアカデミアは、研究者としての探求心をいかんなく発揮できる場所と言えるでしょう。
相当な決意や熱量が必要にはなるものの、自身の興味・関心のある研究に没頭できる環境は、アカデミアの研究職ならではの魅力です。

一方で、民間企業は「応用研究」に力を入れているケースが多いです。

いわばビジネスとしての研究になるため、そこに求められるのは何よりも実用性になります。
だからこそ、商品化やサービスの実現に結び付かない、企業の利益に繋がらないと判断されれば、研究が突然中止になるといったケースも。

シビアな面こそありますが、自身の研究が実際の商品やサービスに落とし込まれて世に出るやりがいは、民間企業の研究職ならではの醍醐味と言えます。

その他の要素から見る、アカデミアと民間企業の違い

そもそもの研究の種類、つまりは研究の目的が異なることの他にも、アカデミアと民間企業における研究職には以下のような異なるポイントが挙げられます。

■研究予算・研究設備
■研究に関わる体制(個人・チーム)
■ひとつの研究テーマに要する期間

■研究予算・設備の違い

アカデミアと民間企業における研究予算を比較すると、一般的に民間企業のほうが充実していると言われています。
それは、民間企業が研究成果のもと新たな製品・サービスを生み出し、その対価を得ているからに他なりません。

例外的に莫大な研究費を有している大学や研究機関もありますが、民間企業と比較すればそれはごく一部。
研究予算によって最新の研究設備等へ投資できる金銭的余裕も変わってくるため、民間企業のほうがその点の環境面は整っていると言えるでしょう。

もちろん、余裕があるからといって好き勝手に研究できるなんてことはありませんが、「会社にとって必要だ」と判断されれば、研究費に悩まされることなく研究に取り組める魅力が、民間企業にはあると言えるでしょう。

■研究に関わる体制(個人・チーム)の違い

基本的に個人ではなく、チームで、それも大人数でプロジェクトを進めていく割合が大きいことも、民間企業における研究職の特徴であり、アカデミアとの違いと言えます。

そもそも、研究成果をビジネスに落とし込む企業の研究職の場合、研究の開発から終了までを一人の研究者が担当するということはまずありえません。

同じ研究チームのメンバーや、新たな技術を活用する許可を出す経営陣や上司、そして実際の商品やサービスに落とし込む技術職など、自社のみに注目しても数多くの人と関わりながら仕事を進めていくことになります。

周りの人との関係性の中で、意識的に「どうすればより円滑に研究を進めていけるか」を考えることも、民間企業の研究者にとっては必要なスキルと言えるでしょう。

■ひとつの研究テーマに要する期間の違い

民間企業における研究には実用性やスピードが求められるという点は上記した通りですが、それ以外の要因でも、民間企業の研究テーマは短期間で変わる可能性が多いにあります。

例えば、あるテーマについての研究を中長期的に進めることが決定した後であっても、競合他社の動向や市場のニーズの変化によって研究の優先順位が変わり、これまで進めてきた研究が即中止とされる場合も。

一方のアカデミアであれば、論文化までを見据えて一つのテーマに長期間取り組み、成果に結びつくまで掘り下げられることが一般的です。

ビジネスとしての研究が求められる民間企業だからこそ、そういった外的要因によって研究テーマが短期的に変更される可能性があるということも、ひとつの特徴だと理解しておくべきでしょう。

まとめ

アカデミアと民間企業における研究職の違いをいくつかご紹介してきましたが、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあることをお分かりいただけたでしょうか。

もちろん、本記事に書かれているのは両者の比較の一部であり、「研究職としてアカデミアと民間企業どちらを選べばいいのか」という問いに対する絶対的な正解はありません。

大切なことは、今後のあなた自身が研究職として何を重視し、どのようなキャリアを実現していきたいか。
「こんなはずじゃなかった」と後になってから嘆くことのないよう、良い面も悪い面も吟味した上で、広い視野を持って自身のキャリアを描いていくことが重要と言えるのではないでしょうか。

 

 

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