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デジタルトランスフォーメーションはなぜDXなのか。導入のメリットや課題も解説

デジタルトランスフォーメーションのメリットや課題

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、AIやIoTなどのデジタル技術によって、生活やビジネスを変革することです。経済産業省が「2025年の崖」という言葉で警鐘を鳴らして以降注目を浴びるようになり、多くの企業がDXを推進し始めています。

本記事では、デジタルトランスフォーメーションがDXと略される理由のほか、DXが注目されるようになった背景、企業が導入するメリット、解決すべき課題などを解説します。

デジタルトランスフォーメーションがDXと略される理由

 

最初に、デジタルトランスフォーメーションの意味と、なぜDXと略されるのかの理由、他の同義語との違いについて解説します。
 

■デジタルトランスフォーメーションとは

「デジタルトランスフォーメーション(DX: Digital Transformation)」は、デジタル技術による生活やビジネスの変革のことです。

デジタルトランスフォーメーションという概念をいち早く提唱したのは、スウェーデンのウメオ大学教授であるエリック・ストルターマン氏で、DXを「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」と定義しています。

また、経済産業省が2018年に発表したガイドラインでは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と定義されています。

ビジネスにおける技術革新も含めて、デジタル技術により社会や暮らし全体を変革することが、デジタルトランスフォーメーションとなります。
 

■デジタルトランスフォーメーションはなぜDX?

デジタルトランスフォーメーションの英語表記は「Digital Transformation」であることから、その頭文字を取るのであれば、「DT」と略されるのが自然だと思われます。なぜDXと略すかというと、TransformationのTransは交差するという意味があり、英語表記ではしばしば交差を「X」の1文字で表すことから、DXが使われるようになりました。また、DTだとプログラミング用語の「dtタグ(definition team)」と混同される可能性もあるので、デジタルトランスフォーメーションがDXと略され、広く浸透するようになったのです。
 

■デジタイゼーション・デジタライゼーションとの違い

デジタルトランスフォーメーションと同様の言葉に、「デジタイゼーション(Digitization)」や「デジタライゼーション(Digitalization)」があります。

デジタイゼーションとは、既存のビジネスにデジタル技術を取り入れて”業務の効率化を図ること”です。例えば、CRMシステムで顧客情報を一元管理する、SFAツールなどの活用で業務を自動化・効率化することなどがこれにあたります。

また、デジタライゼーションとは、デジタル技術の活用で”新たなビジネスモデルをうみ出すこと”と理解されています。例えば、自動車販売がカーシェアリングサービスに変換した例や、CD・DVDのレンタルに代わって、音楽・動画配信サービスなどのSaaS型ビジネスモデルが台頭した例などがこれにあたります。

デジタルトランスフォーメーションとは、これらの延長線上にある概念で、デジタイゼーション・デジタライゼーションの結果、”競争上の優位性を確立して、社会全体に影響を与える”デジタル技術の活用のことです。例えばUber Eatsは、今まで飲食店で楽しんでいたお店の味を、デジタルの活用により自宅で気軽に楽しめるように変えたシステムです。このように、デジタルによって産業構造さえも変えていくことが、デジタルトランスフォーメーションとなります。
 

■IT化との違い

デジタルトランスフォーメーションはIT化とも混同されがちですが、IT化は”IT技術を取り入れる”というだけの意味です。一方のデジタルトランスフォーメーションは、ITなどのデジタル技術で、ビジネスや生活を改革する概念です。ITを進化させることで、人々の暮らしをよりよく変化させることが、デジタルトランスフォーメーションの意義となります。
 

なぜデジタルトランスフォーメーション(DX)が重視されているのか

 

次に、デジタルトランスフォーメーションが重視される背景について、以下で説明しましょう。
 

■2025年の壁問題

経済産業省は、「DX推進ガイドライン」発表と同じ2018年に「DXレポート」を公表し、「2025年の崖」という問題を提起しました。レポートでは、「IT人材の不足」と「基幹システムの老朽化」により、2025年から年間で現在の約3倍、最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると指摘しています。これらの課題を抱える日本の企業は、デジタルトランスフォーメーションを推進するところが増える一方で、人材確保やシステム刷新を行えない企業は、競争力を失ってしまう可能性が高まります。また、老朽化したシステムの維持管理費用が高額になって維持継承が困難となり、サイバーセキュリティなどのリスクが高まることも予測されます。

このように、2025年以降に大きな経済損失が起きる可能性があると経産省が提唱したことが、企業がDXを重視するようになった理由のひとつです。
 

■「デジタルディスラプター」の台頭

デジタルディスラプターとは、AIやビッグデータ、クラウド、IoTなどのデジタル技術を活用することで、既存のビジネスモデルや業界の秩序を破壊するプレイヤーのことです。GAFAと称されるGoogle、Amazon、Facebook、Appleの4社は、携帯電話や小売、コミュニケーションツールなど、生活になくてはならないサービスの提供で、既存ビジネスを破壊してきたデジタルディスラプターの代表です。タクシーや飲食店の利用形態を変革したUberや、民泊という概念を定着させたAirbnb、ストリーミングサービスで音楽を楽しむスタイルを変えたSpotifyなども、これにあたります。

スマートフォンの普及により消費者の行動が変化したことに伴い、これらのデジタルディスラプターによる新しいビジネスモデルが浸透し始め、既存のビジネスモデルから脱却できない企業は、デジタル競争の敗者になってしまう可能性が高まります。デジタルディスラプターの台頭は、多くの企業に、市場から取り残される危機感を募らせることになりました。
 

デジタルトランスフォーメーション(DX)を導入するメリット

 

続いて、デジタルトランスフォーメーションを導入することでうまれる、主に企業にとってのメリットを説明します。
 

■競争力を強化できる

ひとつは、市場における競争力を強化できる点です。デジタルディスラプターらによる、既存ビジネスモデルの破壊と再構築が活発化している中で、今まで市場を牽引してきた企業であっても、これらの新規参入者にシェアを奪われる可能性もあります。市場の急速な変化に柔軟に対応して競争力を高めるには、DX推進に取り組む必要があります。
 

■新しいビジネスモデルを構築できる

多彩なデジタル技術の活用で業務の効率化につながり、予算や人材などのリソースの適正配分が実現します。また、CRMなどにより顧客ニーズの分析もできるので、顧客が望む新たなビジネスモデルの構築も可能となります。
 

■多様化する消費者ニーズに対応できる

消費者ニーズは、「モノ消費」から「コト・トキ・イミ消費」へと、モノやサービスから得られる体験を重視する消費に変化しています。こうしたニーズを正確に把握して、適切な顧客体験(CX)を提供するには、DX推進によるパーソナライズされたアプローチが重要となります。これにより、顧客満足度や顧客ロイヤルティの向上が実現し、安定した経営を期待できるようになります。
 

■不測の事態に対応できる

新型コロナウィルスの影響により、リモートワークの定着など、働き方が大きく変化しました。仮にDXにより業務フローがデジタル化されていれば、勤務場所がオフィスでなくても、支障なく業務を進めることができます。また、自然災害などの有事に対応することも可能となり、DXはBCP(事業継続計画)対策としても有効活用できます。
 

デジタルトランスフォーメーション(DX)の課題

 

一方で、デジタルトランスフォーメーションには以下のような課題もあります。
 

■IT人材不足とリテラシーの低さ

日本は少子高齢化によって、恒常的な労働力不足の課題を抱えており、加えてITのスキルや知見のある人材は、ベンダー企業に集中している状況です。一般企業では、社内にデジタル技術に精通する人材がいないので外注することになり、外注費をかけても自社にノウハウが蓄積されない悪循環が起きています。さらに、日本人全体のITリテラシーの低さも、大きな課題となっています。

データサイエンスが高校で必修科目となるなど、国をあげてIT人材の教育プログラムが推進されてはいるものの、まだまだ不足しているのが実状です。AIやIoT、クラウド、ビッグデータなどの知識やスキルのある人材は、今後ますますニーズが大きくなると予測され、就職や転職も有利に進められる分野といえます。
 

■既存システムの問題

日本企業の既存のITシステムは、部門ごとに独立したシステムを構築して、複雑なカスタマイズを重ねていることが多く、ブラックボックス化しています。そのため維持費が高くなり、新システムを導入するにしても時間がかかるのが現状です。
 

■日本の商習慣にDXが合わない

物理的な押印が必要なハンコ文化や、何人もの回付が必要となる稟議の習慣、スピードよりも正確性を重視する日本人の真面目さなどは、デジタルトランスフォーメーションの推進を阻む要因となります。デジタル技術は、最小限のサービスに、改善を加えてアップデートを重ねることで実装していきます。最初から完璧を求める日本人には、こうしたDXの特徴も、敬遠しがちな理由となっています。
 

まとめ

 

2025年問題を間近に控え、企業はDXを推進しないと市場における競争力を失い、デジタル敗者になる可能性が高まっています。日本の企業がDXを導入するメリットは多いものの、IT人材やリテラシーの不足、既存の基幹システムの問題などがあり、なかなか進んでいないのが実状です。AIやIoT、クラウド、ビッグデータなどの知識やスキルを身につけておくと、DX推進を計画している企業などの就職や転職に有利になるので、DXに興味がある場合は、ぜひ参考にしてください。
 

 

 

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