データを活用する基盤を作る専門職である「データエンジニア」は、AIや機械学習の普及により、将来的にますます需要が高まる職種のひとつです。ビッグデータがあふれるこれからの社会に不可欠な存在であり、経験を活かせばさまざまなキャリアパスも実現できます。
この記事では、データエンジニアの仕事内容や必要なスキル、キャリアパスなどについて解説します。
データエンジニアとは
データエンジニアとは、どのような役割を担うのでしょうか。確認しておきましょう。
■データエンジニアとはどんな職種か
データエンジニアとは、データを活用するための基盤を作るエンジニアのことです。生の状態のデータを企業やエンジニアが活用可能な使いやすい形に処理して、データ分析のためのベースを構築するのが主な仕事となります。
データエンジニアはデータサイエンティストやデータアナリストと連携して、ビッグデータやAIなどの領域で活躍しています。
■データサイエンティスト・データアナリストとの違い
データエンジニア、データサイエンティスト、データアナリストは、いずれもデータを活用して新たな価値を創造する点では同じ専門家です。違いはそれぞれが主とする仕事内容です。
データエンジニアは、データサイエンティストとデータアナリストが扱うデータを整理して、そのためのインフラやシステムなどの基盤を構築します。
データサイエンティストは、データエンジニアが整理したデータを分析して、どう活用するのかを導き出すのが主な仕事です。アルゴリズムや統計といった情報科学理論などの数理統計知識を活用しながら分析し、ビジネス課題の明確化、新商品・サービス開発、業務プロセスを革新するための知見を引き出すなどの役割を担います。いわばデータ分析・活用のスペシャリストであり、データ分析とビジネス改善の提案が主な業務となります。
データアナリストもデータサイエンティスト同様に、ビッグデータを活用して意思決定の精度向上に貢献する仕事です。データサイエンティストが分析モデルの構築に軸足を置いているのに対し、データアナリストは、企業の意思決定支援やビジネスへの応用に関わる役割が多くなります。自社や顧客の経営課題解決に向けたコンサルや、システム構築などを行うスペシャリストといえます。
■データエンジニアの仕事内容
データエンジニアは、主に以下のような業務に従事しています。
●データの整理・加工
データはそのままでは利用できない、使いづらいことが多く、これを整理・加工するのがデータエンジニアの仕事です。データ構成を統一する、欠損しているデータを補う、データの重複をなくすなど、データを分析しやすくするように整えていきます。また、データソースとなるシステムやデータベースから使えそうなデータを収集するのも、データエンジニアの仕事です。
●情報基盤の設計・構築・運用
整理・加工したデータを一元管理する情報基盤を設計・構築して運用するのも、データエンジニアの大事な仕事のひとつです。データベースやクラウドサービスを選定してインフラを構築し、データサイエンティストなどが容易に活用できるようにデータを格納します。稼働後は高速処理への対応、分析環境の改善、トラブル処理、監視などの運用管理も担います。
●AI運用データの作成
機械学習やAI開発における学習に必要な「教師データ」の作成も、データエンジニアの仕事です。質の良い教師データによりAIの性能が向上するため、データを適切に整えることが求められます。
データエンジニアに求められる知識やスキル
データエンジニアには、データを整理・加工して基盤を構築する技術やAI・機械学習の知識など、さまざまなスキルが求められます。ここからは、データエンジニアに求められる主な知識やスキルを紹介します。
■基礎的なプログラミングスキル
データエンジニアはプログラミングを行う機会もあるので、データ分析に使われるPythonやR言語、分散処理システム基盤で使われるJavaなどのプログラミング言語の知識や扱えるスキルは身につけておくといいでしょう。
■データベースを扱うスキル
データを整理するために使われるデータベースの知識や設計スキルも、データエンジニアには必要です。特にデータベースの代表的な管理システムであるRDBと、データを出し入れするのに使うSQLの知識は欠かせないので、必ず習得しておきましょう。
■インフラ構築に関する知識
インフラ構築のためのサーバーやネットワークの知識も、必須と考えておきましょう。ハードウェアやネットワーク、セキュリティなど、インフラに関する知識は多岐に渡るので、自分に合った勉強法で身につけておきましょう。
■クラウドサービスに関する知識
インフラ・システム設計では、最近はデータベースにクラウドを活用することも多いので、オンプレミスだけでなくクラウドに関する基礎知識も欠かせません。Microsoft AzureやAWS、GCPなど導入実績の多いクラウドサービスは、勉強しておくとよいでしょう。
■分散処理・フレームワークに関する知識
複数のコンピュータで大量のデータを分けて処理する「分散処理」や、分散処理に関する2つのフレームワークである「Hadoop」と「Spark」に関しては、最低でも理解しておきましょう。両者の得意分野を把握しておけば、適切に使い分けることができます。
■データ分析のスキルや数学、統計学に関する知識
データ分析や統計学はデータサイエンティストの領域で使うスキルですが、データエンジニアもこれらの知識や経験があると、転職等で有利となります。実際にどのように機械学習のアルゴリズムが作用してビジネスに使われるのか仕組みや流れを知っておくと、業務の効率化につながるほか、データエンジニアとしてスキルアップできるでしょう。
■情報収集能力
AIの領域やデータサイエンスの分野は技術進捗のスピードが速く、最新情報をいち早く入手する情報収集能力も求められます。日本語に翻訳されていない文献も多く、ベンダーに問い合わせたり自分で試行錯誤したりなど、理解するための努力も必要となります。
データエンジニアになるために取得したい資格
データエンジニアになりたいなら取得しておきたい、また、データエンジニアとして転職する際の武器となるのが、以下のような資格です。
■基本情報技術者試験
「基本情報技術者試験」は、「高度IT人材となるために必要な基本的知識・技能を持ち、実践的な活用能力を身に付けた者」を選抜する試験です。IPA(独立行政法人情報処理機構)が主宰しており、経済産業省が行う国家試験「情報処理技術者試験」の区分のひとつとなっています。
資格取得のために勉強することで、プログラミングの基礎やアルゴリズム、システム開発などのITの基礎を幅広く習得でき、データエンジニアとしてのスキル向上のほか、マネジメント能力も高められます。
■統計検定
データ分析に不可欠な知識や活用力を認定するのが、一般財団法人統計質保証推進協会が実施する「統計検定」です。データエンジニアには膨大なデータの中から重要な情報を導き出すことが求められ、統計スキルを身につけることで、情報を導いた推定根拠や論理的な説明が可能となります。
■Professional Data Engineer
「Professional Data Engineer」は、データ分析のスキルを評価する資格です。Google Cloudが認定した資格のひとつで、主にデータ構造やデータ処理システムの設計、ビジネスプロセスのモデル化などの知識を得ることができます。データエンジニアにも望まれる、ビジネス上の課題や成果を客観的に評価できるスキルが身につきます。
データエンジニアのキャリアパス
最後に、データエンジニアになるための方法や、転職するためのキャリアパスなどを紹介しましょう。
■未経験からのキャリアパス
データサイエンスの分野は、経済産業省の指針でも「人材育成が急務」とされている領域です。需要に供給が追いついていないデータエンジニアやデータサイエンティストは、未経験者であっても好条件の就職・転職が期待できる職種です。
未経験からデータエンジニアになるには、身につけなくてはならない知識やスキルが多くたゆまぬ努力が必要です。全くの未経験者なら、最低限の知識を独学で身につけながら、プログラマーなどで経験を積むのがよいでしょう。
■他職種からのキャリアチェンジ
AIや機械学習の経験者であれば、比較的容易に転職が可能です。他職種でも、例えばシステムエンジニアであれば、データの収集や分析、データウェアハウスの構築・運用の経験があるので、データエンジニアとしてもそのスキルを有効活用できます。
■データエンジニアから他職種へのキャリアチェンジ
データエンジニアがほかの職種につくなら、分析能力を磨けばデータサイエンティストになることができます。また、機械学習やAI開発に関わった経験があれば、AIエンジニアへの転職も可能です。このほかデータベースエンジニアやインフラエンジニアなど、データ管理の知識を活かしてそれぞれの分野に特化していくキャリアパスもあるでしょう。
まとめ
IT人材は慢性的な不足状態で、データエンジニアのような専門性の高い人材は、今後ますます需要が高まるとされています。データエンジニアは転職市場でも将来性があり、データを活かした様々な分野へのキャリアチェンジも可能なので、データエンジニアになるための知識やスキルはぜひ身につけておくようにしましょう。
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