Read Article

自然言語処理の可能性は無限大|エンジニアニーズも高まる

自然言語処理の可能性

自然言語処理とは、コンピュータに自然言語を分析させる一連の処理のことです。大量のテキストデータの解析や、画像などの非構造化データの処理ができるため、マーケティングやビジネスシーンのほか、生活の利便性を高めるあらゆる分野で活用されています。自然言語処理は今後も一層の進化が見込まれており、自然言語処理の知識やスキルがあると、就職や転職も有利に進められることでしょう。

本記事では、ここ自然言語処理についての基礎知識のほか、実施手順、活用方法などを解説します。

自然言語処理とは何か

 

最初に、自然言語処理の概要を確認しておきましょう。

 

■自然言語とは

自然言語とは、私たちが普段コミュニケーションをする際に使う言葉のことです。同じ言葉でも、話す人や文脈によって違う意味になり、構文や意味合いのルールがはっきりしていません。これに対する言葉として、語彙や文法が人工的に作られた人工言語や、特定の目的のために規則的に構成したプログラミング言語のような形式言語があります。これらは、構文や意味が明確で厳密に定義されており、自然言語のような曖昧さはありません。

 

■自然言語処理とは

自然言語処理(Natural Language Processing)とは、自然言語が持つ意味を、コンピュータで解析する一連の処理のことをいいます。コミュニケーションで使う話し言葉や記述した書き言葉の意味を、さまざまな方法で解析します。

曖昧さを含む自然言語を機械が処理するのは難しいことですが、近年のAIの技術向上により、高い精度で自然言語処理を行えるようになりました。
 

自然言語処理でできること

 

自然言語処理を行うと、以下のようなことが実現できます。

 

■テキストマイニング

大量のテキストデータを処理する自然言語処理は、テキストマイニングに適しています。テキストマイニングとは、テキストデータの中から有益な情報を抽出する技術のことです。AIが自然言語解析を用いて文章を単語ごとに分割し、出現頻度や相関関係を分析することで、新たなチャンスやリスク、インサイトなどを発見できます。例えば、SNSの書き込みやコールセンターへの問合せを分析すると、言葉に埋もれている不満やニーズなどを知ることができます。自然言語処理を活用することで、マーケティングやさまざまなビジネスシーンに活かせるヒントを得ることができます。

 

■非構造化データの処理

自然言語処理により、音声データや画像、動画などの非構造化データを処理できます。非構造化データとは、行や列によって構造化されていないデータのことで、曖昧性の高い人間の言葉は典型的な非構造化データです。構造化データと違い、コンピュータで分析するのは容易ではないものの、AIのさまざまな機械学習により、非構造化データの処理精度が高まっています。例えば音声データの解析は、音声入力や工場での異音検知など、社会実装を目的とした幅広い研究が行われています。画像データ解析も、自動車の自動運転などの身近な技術に応用が拡がっています。

 

自然言語処理の流れ

 

自然言語処理は、「形態素解析」「構文解析」「意味解析」「文脈解析」の4つのステップで処理が行われます。処理を行う前の準備と、4工程の詳細をそれぞれ説明しましょう。

 

■処理を行う前準備

自然言語処理を行う前に、機械可読目録とコーパスを準備する必要があります。機械可読目録(MAchine-Readable Cataloging:MARC)とは、書き言葉の書籍情報や関連情報を、機械が読める形に置き換えたデータフォーマットです。機械が文字を認識できる規格に変換します。また、自然言語を集めて、文法などの構造情報を整理した「コーパス」も必要です。AIが非構造化データである自然言語を読み解くための、辞書のような役割を果たします。コーパスにより、構造化されていない文章を構造化して読むことができるようになるのです。

機械可読目録とコーパスの準備ができたら、以下の4工程で自然言語処理を行います。

 

■自然言語処理の手順

●STEP1 形態素解析を行う

自然言語処理では、最初に文章を単語に分解する「形態素解析」を行います。形態素解析とは、意味を持つ最小の単位である単語に文章を分割して、品詞などの情報を割り当てます。これにより、文章中の各形態素の意味を、データとして抽出できるようになります。
 

●STEP2 文章の構造を解析する

続いて、形態素解析した単語同士の関係性を考える「構文解析」の工程となります。バラバラになった単語を、どのように組み合わせると意味のある文章になるかを解析する作業です。文法的に正しい構造は複数想定でき、構文解析の段階では、すべての構造を引き出すようにします。
 

●STEP3 文章の意味を分析する

次は「意味解析」の段階で、構文解析した文の意味を解釈する工程です。1つの文の解釈から正しい意味を選ぶのが意味解析で、単語それぞれのつながりから判断するほか、辞書を用いて正しいものに絞り込んでいきます。
 

●STEP4 文脈を理解し情報を抽出する

最後は、「文脈解析」の工程です。前後にある複数の文同士のつながりを解析することで、文脈を明らかにしていきます。文章同士の関係性を明確にするには、言葉の意味や文法だけではなく、文章の背景や一般常識などのさまざまな情報や知識が必要です。そのため、実用性が充分な文脈解析システムは、現状では登場していません。

 

自然言語処理の活用例

 

ここからは、自然言語処理を活用したさまざまなサービスなどを紹介しましょう。

 

■機械翻訳

Google翻訳などの機械翻訳は、自然言語処理によってできる機能のひとつです。近年機械翻訳の精度は一気に高まっており、AIの技術向上によって、的確に文脈解析意味解析が行われるようになってきています。

 

■対話システム

「Siri」や「Googleアシスタント」「Alexa」などのスマートスピーカーや、チャットボットの対話システムも、自然言語処理を活用したサービスです。人間の言葉を認識して、それに対する適切な回答を文章化する機能を提供しています。

 

■検索エンジン

検索エンジンも、自然言語処理の代表的な事例のひとつです。2019年に導入されたGoogleの最新自然言語処理技術である「BERT」は、文脈を理解できることで注目を集めました。「BERT」の導入で、より複雑な条件が含まれている検索クエリに対しても、適切な検索結果を表示させられるようになっています。

 

■文章要約

最近は、AIが文章の内容を理解して自動で要約する、文章要約も行われるようになっています。抽出的要約生成的要約というアルゴリズムを用いて、自動要約が成立しています。

 

■感情認識

自然言語処理を用いて、感情認識もできるようになりました。代表的な活用例がネガポジ判定で、対象とする文章がポジティブな意味合いなのかネガティブなのかを判定する技術です。

 

■AI-OCRの精度向上

カメラで手書き文字を認識し、文字データへと変換させる技術であるAI-OCRの精度を向上させる目的でも、自然言語処理は活用されています。これにより、書類に記載された文書等のデータ化が実現し、業務効率化に貢献しています。

 

■かな漢字文字変換予測

Google日本語入力やMicrosoft IMEのように、かな漢字文字変換予測にも自然言語処理が使われています。最近では、長い文章を入力しても高精度な変換ができるようになりました。

 

■音声の文字起こし

音声データにおける、言葉の意味を正しく理解してテキストデータに変換する文字起こしも、自然言語処理を活用した機能です。

 

■テキストマイニング

テキストマイニングでは、整理されてない大量のテキストデータから有益な情報を抽出でき、マーケティングなどに活用できます。
 

ポテンシャルの高い自然言語処理はさらに進化する

 

自然言語処理の分野は、今は言葉に含まれた感情や内容などまでは把握できないのが実状です。ただし今後の研究によって言葉を理解できるようになれば、ロボットなどの研究も含めて、新しい対話可能AIの実現も夢ではなくなるでしょう。さまざまなビジネスに活用される可能性も高く、さらなる進化が期待されている分野のひとつです。

自然言語処理のスキルのあるエンジニアに対する需要も増えると予測され、転職市場においてもこれらの知識やスキルがあることが、強力な武器となることでしょう。
 

まとめ

 

自然言語処理の分野は、今後もますます進化が期待される分野です。自然言語処理はビジネスシーンでもさまざまな活用方法があり、この知識やスキル、開発経験などがあるエンジニアは、転職市場でもニーズの高い人材となります。AIや機械学習、データサイエンスなどの分野に就職・転職を考えているなら、自然言語処理のスキルも習得しておくようにしましょう。
 

 

 

URL :
TRACKBACK URL :

コメント

*
*
* (公開されません)

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

Return Top