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【大学研究室Vol.7】新たな製品の開発や、より環境負荷の少ない製法に貢献する高機能の触媒をデザインしていく。

注目の大学研究室

名古屋大学大学院工学研究科 化学・生物工学専攻 バイオマテリアル講座 石原研究室
教授 工学博士 石原一彰

生物がくれるヒントを応用

化学反応を制御し、その反応を速める触媒は、医薬品や農薬など様々な化学製品の製造、研究開発のキーとなる物質だ。

「新たな製品の開発や、より環境負荷の少ない製法に貢献する高機能の触媒をデザインしていく。それもヒトの体内にもある酵素に学んで開発しようというのが、私たちの主要な研究テーマなのです」と石原一彰教授は説明する。

応用化学一筋だった石原教授が〝畑違い〞の酵素に着目したのは、「与えられた環境に従った」のがきっかけだったという。「教授になったのを機に、学科の要請で生物系の授業を受け持つことになったんですね。仕方なく独学で生体機能などを勉強しました(笑)。ところが始めてみたら、生物の営みは自分の本業にとってヒント満載だということに気づいたわけです」

それはどんな〝ヒント〞だったのだろう?

「外から栄養分を取り入れて、それらを使って脂質やアルカロイドなどの有用物質を合成するという〝代謝〞は、まさに有機化学の世界。それを制御している酵素は、触媒そのものなのです。ところが同じ触媒でも、フラスコの中の反応に使っているものと違い、非常に効率よく反応をコントロールして、副反応も存在しません。かつ特定の物質に選択的に働くというのも、大きな特徴です」

〝酵素から学ぶ〞ことによって広がる可能性の一つは「グリーンケミストリー」への応用だ。

「化学工業でも、製造時の有害物質の排出削減や、より少ない原料での高純度品の生産といった〝環境対策〞が求められるようになっています。個々の合成を制御してその効率を高めたり反応工程数を減らしたりすることは、そうしたニーズを実現する重要な手段。制御のカギを握るのは、いうまでもなく触媒です。他方生体内では、つくられたものが無駄なく使われていく循環の仕組みが完璧に働いていて、やはりそこで酵素が決定的な役割を担っている。その働きを有機合成の現場に応用できないか、というのがアプローチの方向性なんですよ」

特許化を推進
民間転用を目指す

そうした〝触媒のデザイン〞においては、元素戦略も重要な意味を持つ。

「レアメタルが入手難になったら、とたんにアウトというのでは困りますからね。それらに過度に頼らない触媒づくりを考えなければなりません。我々が注目しているのはヨウ素。金属ではない無機元素にもかかわらず、酸化還元反応に使えるのです。甲状腺ホルモンに含まれている安全な物質であることもメリットでしょう」

同研究室ではすでに100近い触媒を合成、約30件の特許を取得。まだ最終製品まで到達した例はないものの、「それらをシーズに産学連携で共同開発をしたり、使えるものは企業に使ってもらったりするのが研究の目的です」と石原教授は言う。

「いくつかは試薬として販売もしています。今最も期待しているのが〝光学活性ビナフチルジスルホン酸〞という物質で、いろいろな不斉触媒の原料になりうるものです。先日も米国の研究者から問い合わせがあり、サンプルを送ったところです」

究極の目標は〝酵素を凌駕する小分子高機能触媒の設計〞だ。「実は酵素は、我々が普段使っている触媒の数百〜数千倍くらいの分子量を持っているんですよ。そのことが、述べてきたような機能を発揮できる要因の1つではあるのですが、とはいえ分子のすべてが反応に関与して
いるわけではありません。化学反応に必要な酵素の活性部位のみを100分の1のサイズで〝再現〞できれば、はるかに原子効率の高い触媒ができるはず。そこを目指して研究を続けていきたいと考えています」

ところで石原研究室では、博士課程に進む学生に対し、3カ月の研究留学を勧めている。

「留学先を斡旋し、費用は大学の補助金などを活用して行ってもらっています。私自身、学生時代の留学経験がとても貴重な体験になりました。どちらかというと保守的な最近の学生ですけど、そうした機会を利用して思い切って海外にも出て、いろいろ学んでほしいと思っているんですよ」

「結局、我々がやっているのは、実験を通じて『理屈どおりにいかないものを見つける』こと。考えに考えても、なかなかうまくいかない。でもうまくいかないところが、また面白い。研究室は、そこに惹かれた人間の集まりです」

注目の研究

「酵素にしかできなかったことを、人工的な触媒で実現し、最終的には酵素を凌駕する機能触媒を開発する」のが研究室の目標。人工触媒と酵素の大きな違いは、前者がいろいろな反応に使えるのに対し、後者はそれぞれが特定の反応にしか関与しない「基質特異性」を持つことだ。そのため、無駄なく最適な“ものづくり”が行える。「それを手本に、合成のターゲットとなる物質に“テーラーメイド”の触媒を開発したい」と石原教授は話す

石原一彰
教授 工学博士

いしはら・かずあき/1963年、愛知県生まれ。86年、名古屋大学工学部応用化学科卒業。91年、同大学大学院工学研究科応用化学専攻博士後期課程修了。同年、ハーバード大学にて博士研究員。92年、名古屋大学工学部助手、97年、同大学難処理人工物研究センター助教授を経て、2002年から現職。

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  1. 名古屋大学大学院工学研究科で「触媒合成学研究室」を主宰する石原一彰です。多くの方にこの記事を読んで頂き大変光栄です。研究室のwebsiteやfacebook pageをほぼ毎日更新しておりますので、是非ご覧ください。当研究室に関して何かご意見・質問・感想などがございましたら石原までお送りください。今後とも応援の程よろしくお願い申し上げます。

  2. 2015年度に最先端機能分子・材料合成技術ユニット(M&M SYNTECH Unit)を立ち上げました。メンバーは石原一彰(ユニット代表者、名大工、触媒・反応開発)、上垣外正巳(名大工、高分子合成化学)、横島聡(名大創薬、全合成)、YOU Shuli(中国上海有機化学研究所、触媒・反応開発)の4人です。ユニットメンバーは、皆、合成技術の匠ですが、ターゲットが異なるため、考え方も研究のアプローチも全く異なります。毎月情報交換会を開催し、喧々諤々の議論を重ね、シナジーのある研究に挑戦していくことで、分子合成技術の世界拠点を築きたいと思っています。
    http://www.aip.nagoya-u.ac.jp/public/nu_research_ja/features/detail/0003566.html

  3. 【動画】石原研究室(触媒有機合成学):酸塩基複合化学を基盤とする高機能触媒の設計 https://www.facebook.com/kishiharalab/videos/1748632905395583/

  4. 「東日本復興と学び応援プロジェクト」
    自分たちの力を信じよう~化学者の立場から
    http://www.wakuwaku-catch.jp/ouen_pj/message/1026.html

  5. [強力な研究室を作るためのマネジメント]
    石原一彰(名大院工)化学フェスタ2016 講演要旨 K1-06
    https://www.facebook.com/kishiharalab/

  6. 名古屋大学・石原 一彰先生のAngewandte Author Profileを公開
    http://www.wiley.co.jp/blog/pse/?p=5922

  7. 座右の銘その1「知之者、不如好之者。好之者、不如楽之者。」(「論語」雍也第六の二十より )
    「之を知る者は、之を好む者に如かず。之を好む者は、之を楽しむ者に如かず。」 “To like is better than to know. To enjoy is better than to like.”

    座右の銘その2 “Anyone who has never made a mistake has never tried anything new.” (Albert Einsteinの言葉)
    一度も失敗をしたことがない人は、何も新しいことに挑戦したことがない人である。

  8. 2017年3月6日、リクルートの「みんなの座右の銘」の「本日の座右の銘」として、当研究室の座右の銘が取り上げられました。
    https://www.facebook.com/recruit.jp/photos/a.240620755967175.76184.240606315968619/1604724326223471/?type=3&theater

    【本日の座右の銘】
    大学時代の恩師からいただいた言葉、だそうです。投稿者“K.Ishihara Lab.”さんから頂きました。

    苦手意識を持ったら負け。どんなときでもおもしろいところもあれば嫌なところもあります。おもしろいところに気づけば、苦手意識も克服できる。
    そして、楽しいところに気づけばとことんがんばれる。
    そう、本日の言葉を教えてくれました。

    意に反する場面も、不条理に感じることもある。大人なのだからとガマンするより、どうしたら楽しめるか、そう思って行動する習慣を持つ。
    人生、ゆっくりと楽しめるほうへ。舵をきっていければと思います。

    卒業の季節に贈る、本日の座右の銘でした。

  9. 石原一彰教授が「平成29年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門)」を受賞しました(受賞日:平成29年4月19日)。

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