ニューラルネットワークは、人間の脳のニューロンが信号を相互に伝達する方法を模して数理モデル化したもので、ニューラルネットワークが発展したのが、AI開発に欠かせないディープラーニングです。ニューラルネットワークには多くの種類があり、それぞれ視覚や聴力などで入力したデータを人間の脳のように情報処理をして、社会やビジネスに役立つ出力を行っています。
本記事では、ニューラルネットワークと機械学習やディープラーニングとの違い、その構造や仕組み、種類などを解説します。
ニューラルネットワークとは?
最初に、ニューラルネットワークの意味と、機械学習やディープラーニングとの関係性などを説明します。
■ニューラルネットワークとは
「ニューラルネットワーク(Neural Network)」とは、人間の脳内にある神経細胞(ニューロン)を模した数理モデルで、パターンを認識するための一連のアルゴリズムのことです。AI(人工知能)や機械学習の必要性が高まる中で、これらを学ぶ際に一緒に知っておくべき仕組みが、ニューラルネットワークです。
ニューラルネットワークでは、入力したデータからある一定の傾向やパターンを機械的に認識することで、クラスタリングやラベリングを行います。認識できるパターンは、画像や音声、テキスト、時系列などとなります。人間の脳のように、高密度に相互接続している脳内神経回路によって物事を学び、パターンを認識して意思決定を行えるようにすることが、本来の意義となります。
■機械学習やディープラーニングとの違い
機械学習は、AIにおけるデータ分析技術のひとつです。機械学習には、それを実装するための手法が多くありますが、ニューラルネットワークはそのひとつとなります。ディープラーニングも同じく機械学習の手法のひとつで、ニューラルネットワークの技術が発展したものです。ディープラーニングは、ニューラルネットワークの複数の層を重ねて多層化することで、学習能力やデータ分析能力を高めました。その結果、最近のAIの開発では、ディープラーニングが主流となっています。
■ニューラルネットワークが普及した理由
ニューラルネットワークの技術が誕生したのは、1943年にウォーレン・マカロックとウォルター・ピッツが、その計算モデルを作ったときとされています。その後は計算資源の不足により、長い間表舞台に出ることがなかった技術でしたが、最近になり高度な計算処理を行うGPUなどが登場したことから、再び注目されるようになりました。GPUは、主にゲームのグラフィック処理に使われている半導体チップですが、ニューラルネットワークの実行にも適していることがわかり、GPUの利用増に合わせてニューラルネットワークも普及しました。
ニューラルネットワークの構造と仕組み
続いて、ニューラルネットワークの構造や仕組みを解説します。
■ニューラルネットワークの構造
ニューラルネットワークには多くの層があり、ネットワークが複雑になるほど、層も多くなります。最も単純なニューラルネットワークは、「入力層」「隠れ層(中間層)」「出力層」に分かれていて、それぞれが特定の機能を果たします。
■ニューラルネットワークの仕組み
入力層は、外界からのデータを収集する役割を担い、入力信号を次の隠れ層に転送します。
隠れ層では、計算の全てのバックエンドタスクを行います。ニューラルネットワークには最低でも1つの隠れ層がありますが、この隠れ層は複数設けることができ、多層化することで、複雑な問題にも解決できるようになります。このように、隠れ層を複数所有するのがディープラーニングです。
隠れ層で処理された信号は最後の出力層に送られ、出力層では隠れ層での計算の最終結果を伝達する役割を果たします。
例えば、犬を認識する場合、最初の入力層では、画像やビデオ、音声、テキストなどの入力を受け取ります。続いて、複数ある隠れ層の第1層で画像を明るい部分と暗い部分に分け、次の層でエッジを認識します。こうしていくつかの層を経て、最終的に犬の画像を認識し、出力層から伝達されます。これらのネットワークは非常に複雑につながっており、受け取った入力を分類・認識できるように、何百万ものパラメータで構成されています。
■ニューラルネットワークの学習
ニューラルネットワークの学習方法には、大きく「教師あり学習」と「教師なし学習」があります。
教師あり学習
教師あり学習とは、学習データに、教師データなどと呼ばれる正解を与えて学習させる手法です。そのため、正解が明確な問題を解決する場合に適した学習方法といえます。教師あり学習で利用される主なアルゴリズムが、データが属するカテゴリーや種類を判定する「分類」と、予測に適した「回帰」なので、顧客のセグメンテーションやシステムの不正行為の検出、株価の予測、スパムメール判別、顧客のLTV(顧客生涯価値)判定などが可能となります。過去データが多いほど学習精度は高くなり、学習速度が速いことがメリットで、社会やビジネスにおける実用的な価値の発見に適しているといえます。
教師なし学習
教師なし学習とは、学習データに正解を与えないで学習させる手法です。教師なし学習では正解が存在しないので、新しい入力データを継続的に調整させることによって学習させます。データ内に存在する未知のパターンを見つけたいときに適しており、自然分布の把握やクラスタリング、データ内のカテゴリ関係の発見などが可能となります。
ニューラルネットワークの種類
ニューラルネットワークには様々な種類がありますが、代表的なものとして以下が挙げられます。
■オートエンコーダ
「オートエンコーダ」は、教師なし学習の手法のひとつで、入力されたデータと、最終的な出力が同じになるように処理するアルゴリズムです。次元削減や特徴抽出を目的に登場し、異常検知や生成モデルとして用いられています。
■ディープニューラルネットワーク(DNN)
「ディープニューラルネットワーク」は、ニューラルネットワークを複数重ねて多層化したもので、ディープラーニングに対応します。ビッグデータがより容易に扱えるようになったことや、GPUなどの性能の大幅な向上により一般化しています。
■畳み込みニューラルネットワーク(CNN)
「畳み込みニューラルネットワーク」は、多数の深い層を持つニューラルネットワークで、人間の視覚野の神経細胞の働きを模倣したことから、特に画像認識で高い性能を発揮します。最近では、言語処理や音声処理の分野でも用いられています。
■再帰型ニューラルネットワーク(RNN)
「再帰型ニューラルネットワーク」は、時系列データを扱うことができるように拡張したニューラルネットワークです。売上やサイトへのアクセス数などの予測が可能で、文脈を理解できることから、Google翻訳などの機械翻訳や音声認識にも使われています。
■LSTM
「LSTM」は、再帰型ニューラル ネットワーク(RNN)の一種です。RNNでは、関連する情報とそれが必要になる場面が離れるほどうまくつなげることができなかったものを、LSTMでは、ユニットごとに2つの機構からなるLSTMブロックを導入することで解決しました。
■敵対的生成ネットワーク(GAN)
「敵対的生成ネットワーク」は、データから特徴を学習することで、実在しないデータを生成できるほか、存在するデータの特徴に沿って変換することが可能なネットワークです。Generator(生成ネットワーク)とDiscriminator(識別ネットワーク)の2つのネットワークで構成されており、互いに競い合わせることで精度を高めていきます。これにより、最終的に本物と偽物の見分けがつかないデータを作り出すことができます。
まとめ
ニューラルネットワークは、ディープラーニングの基礎となるモデルで、AIや機械学習の需要が高まる中で、これらとともに学んでおきたい仕組みです。ニューラルネットワークには様々な種類があり、それぞれ社会やビジネスで実装する際の役割や目的が異なります。AIや機械学習、データサイエンスなどの分野に就職・転職を考えているなら、こうした知識も習得しておきましょう。
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